マークスの山 読書感想記・4 



~10月10日土曜日~
「洩れていたの、二名だけです」「一晩でやったんか」「今朝の会議に間に合えば、一日稼げるでしょうが。家に帰ってもすることないですから」 森の陰気な目を見ると、ときどき横っ面を張り飛ばしたくなる。昨夜は、合田は用事があって先に帰っただけだが、森は余分の仕事を押しつけられたと誤解したに違いなかった。この男のことだから、ひとりで歯ぎしりでもしたのだろう。
確かに、かわいくない部下だよな。捻くれまくってるよコイツ。だけどそれにしても、散々な言われようだな、お蘭(涙)。顔見ただけで横っ面を張り飛ばしたくなる、だなんて。合田さん、森くんはそこまで嫌な奴じゃないと思うけど・・・。ひとりで歯ぎしりなんて、そんな陰気くさい事するような肝っ玉の小さい男じゃないもんっ。合田さんの為に一生懸命、徹夜したのかもしれないのに(ぐすっ)

「また痒いんか」「放っといて下さい」 何やら腹にためている森も、それを横目で睨んでいる自分もどちらも醜悪だと思いながら、合田は森の背を見送った。片や、年がら年中、自分自身を含めた世界のすべてが気に入らないような面をし、片や何一つ気にならないとうそぶいて憚らない面をしている。それでもやっていける自分たちの社会は、外から見ればさぞかし異様なものだろう。 
年がら年中、自分自身を含めた世界のすべてが気に入らないような面をしている森くんも、何一つ気にならないとうそぶいて憚らない面をしている合田さんも、どっちも魅力的だわ~ ふたりのこの微妙な感じ。萌え~だわぁ

とはいえ、結局俺は森が好きなのかなと合田は一瞬考えた。ろくでもないことを考えたおかげで、尿意を催してきた。
きゃ~! やっぱり合田さん、森くんの事好きだったのね。愛していたのねっーーー ろくでもないこと~云々言っちゃってるけど、照れ隠しでしょー? 素直におなんなさい、雄一郎(うふっ)

適当に答えながら、合田はそのときふと、滅多に考えないことを考えていた。目の前の秀才の警視。森と同い年だ。もう一、二年すれば本庁の第一強行犯捜査班へ戻って調査担当管理官か副参事か、地方本部の副本部長か。さらに数年すれば確実に地方本部長の椅子が約束されているこの男と、自分たちノン・キャリアの違いはテコでも動かない現実だった。そんなことは百も承知だが、徹夜明けの森の青白い顔を見たあとでは、この落差がなぜかあらためて非現実的に思えたのだった。
警察という組織は、なかなか複雑な構造で出来ているんだなぁ。キャリアとノンキャリアの違いかぁ。まぁ、警察だけじゃなく世の中全てそういう仕組みで出来てるよね。だけど、徹夜明けの森くんの青白い顔って萌えだわ~ 実は、この森くんの青白い顔萌えだけの為にココを抜粋。すんません。

合田は二十九で警部補になった。同期の大卒組の中では早い方だった。所轄署五年、本庁六年の勤務歴の中で、めったに出会うものではない凶悪事件に三度巡り合い、特別功労賞三回と競争率百倍の昇任試験で這い上がってきた。 (~途中略~) 定年まで二十七年、昇進には上限があるし、あと一つか二つ昇れば終わりだが、父のような男が何万人もいるのが警察の本体であるとすれば、自分はその本体の頂点に近いところにいるのだった。そこへは、森も数年のうちに加わってくる。
ノンキャリアで29で警部補になっちゃうって、かなり凄い事なんじゃないの?合田さん優秀なんだ~(感心)。だって、森くん(当時)30歳で巡査部長だよ。森くんよりも全然優秀なんだなぁ。競争率百倍の昇任試験にパスって! 凄すぎるっ!! 合田さん、確かにかなり頂点に近いところにいるよねぇ。森くんもあと数年でそこに加わってくるって言ってるけど、この時点では確かにそうだったかもしれないけど・・・しかし結局は、出世競争から外れて離島に行っちゃうんだよね(涙)。まぁこうなったら、合田さんには森くんの分まで頑張って昇進してほしい。

その夜の捜査会議では、またまた森が主役になった。相変わらず、聞き込みの単調な報告が続いていたときだった。 (~途中略~) 「弁護士林原雄三に面接したところ・・・・・」と肥後が述べ始めたとたん、森がまたひょいと口を出した。 「面接は事務所ですか、自宅ですか」「渋谷の事務所だ」「今日は祝日ですが」
お蘭ちゃん、また会議で突っ込んでます。この後も、肥後が報告した林原の証言についても『間違っている』と、噛みつきます。同僚の肥後にさえも容赦なし。警察という組織ってただでさえ潰し合いや足の引っ張り合いがありそうなのに、こんな事ばかりやってたら誰かの恨み買って本当に潰されちゃうぞう。お母さん、心配。(結局、島行っちゃったけど・・・・・

~10月12日月曜日~
又三郎がトイレに立った間に、合田は森の袖をつついた。「吉富組と親しいような弁護士だから、口のきき方に気をつけろ」 未練がましいと自認しながら、合田は念を押した。相手は弁護士という職業柄、法曹界はもちろん、どういう人脈があるか分からない。ヘタをすれば、森の将来に響く事態になりかねないというのは、本心から出た危惧だった。
んん~、やっぱり合田さん、なんだかんだいってもお蘭ちゃんが心配なのねん。きっと、かあいくてしょうがないのねん

森は、余計なお世話だという顔で首を少し縦に動かした。合田は構わず、急いで続けた。「又三郎も要点は押さえているはずだが、あいつはずっこけることもあるから、君が手綱を締めてろよ。さあ、要点を言ってみろ」
コラッ!お蘭っっ!!なんだその態度はっ。 せっかく合田さんが心配してくれているというのに。こんなんだから合田さんに『ときどき横っ面を張り飛ばしたくなる』とか、言われてしまうのよ。確かにこういう態度されると横っ面を張り飛ばしたくもなるよねぇ。こんなかわいくない部下、なんなら一発ぐらいお見舞いしてやってもかまわなくてよ、合田さん。

「分かってます」森は暗い光をたたえた目を光らせて、抑揚のない声で答えた。「又三郎とは揉めるな」合田は最後にそう言った。森はそれには応えず、「今晩、ウナギ食いましょう」と言って出て行った。
暗い光をたたえた目を光らせて抑揚のない声で答える、森。かっこええ(涎)。又三郎とは揉める気漫々か?

林は神経質な眉根に皺を寄せて合田の顔を見つめ、「温情など無用だぞ。分かってるな?」と念を押した。「分かってます」「それから、この写真に顔を撮られた捜査員は、すぐに本部から外せということだ」「それは出来ません。これ以上人は減らせません」「代わりは補充する」「現場を見てない者は役に立ちません。これだけは譲れません」「俺を困らせる気か・・・・・」「ホシが挙がらなかったらもっと困ります。森の働きは係長がご存知でしょうが」
「森を捜査から外せ」という上からの命令を何とか覆そうと、モヤシに掛け合う合田さん。森くん本人の前では冷たい態度を取る合田さんだけど、なんやかんや言っても思いやってあげてるんだなぁ(うるうる)。森くんはそれに気付いているのか?気付いてないなら早く気付けよっ!そいで、そんな合田さんに対して、もっと感謝の気持ちを素直に表せっ。・・・そうそう、そういえば合田さんも、この頃は加納さんの気持ちに全然気付いてないんだった。ホントふたりともこういう事には鈍感なんだから・・・。

それはそうと・・・・森の顔に間違いないか。合田はエレベーターの隅でそっと雑誌を開き、写真を確認した。森の顔が奇妙に滲んでぼやけて見えた。いつものことだが、いかにも《痒い》という顔だった。森を捜査から外さなければならない。
お蘭ちゃんの載ったこの週刊誌、ほ、欲しい。

なんとトンマは雪之丞か。《いいか、主任。あいつも真っ青な顔して、ともかく八雲に飛んでいったんだから、ほかの奴には言うな。とくにお蘭にはな》
上記は捜査でヘマをやった雪之丞を気遣う又三郎の言葉ですが。森くんだって、そこまで嫌な奴じゃないと思うんですけど・・・。雪之丞に対してそんな陰気なイジワルしないよぅ。ちょっと偏屈なだけだよぅ(涙)。それにしても、やっぱりお蘭は七係のお荷物扱いなのね。

さすがに又三郎と森の切れ者同士、手ぶらでは戻ってこなかった。土産は、事務所の受付から黙ってもらってきたチラシが一枚。 (~途中略~) 合田と吾妻はチラシを奪い合って写真に見入り、唸ってしまった。「多分、主任たちが持っている写真とはだいぶん顔が違うと思うぜ」と又三郎は得意げに言った。「なに、事務所でふいとチラシを見て、こっちも《あれ》と思ったんだ。弁護士名鑑の写真は、お見合い用の修正写真じゃねえか、あれ」「チラシの日付から見て、このチラシの顔の方が現在の本人により近いと思います」と森も言った。 吾妻と二人、「脱帽」と頭を下げた。
ここ、『マークスの山 単行本・60版』からの抜粋なんですけど、あたしの手元にあるもう一冊の23版の方では、こうなってます。 《「お蘭には負けたぜ」と又三郎は珍しい文句を吐いた。「こいつの手さばき、見せたかったな。受付の目を盗んで、あっという間に一枚ポケットに入れやがった。ほら・・・・・この男、子供を抱いているこいつが林原」「事務所で聞いたのか」「そんなバカなまねするか」「受付の奥に額入りの林原の写真がかかっていたので、顔が分かりました」と森。》  又三郎と森くんの台詞がかなり変わってます。同じ単行本でも改稿されてるんですね。何で改稿したのかなぁ、別に変える必要ないと思うんだけど。23版の方が、森くんの優秀さが強調されている様で、お蘭ファンとしては改稿してほしくなかった様な・・・・

「いえ。もう一つ、言いました」と森。「あの山の・・・・」「あ、そうか。受付の壁に、山の写真が飾ってあったんで、『きれいですなあ』と言ってやった。お蘭、ほかにあったか」「いえ。それだけです」「山というのは、どこの山だ?」と合田は尋ねた。「どこの・・・・?」又三郎は一瞬きょとんとし、「山は山だ」と応えた。その傍らで森がぽつりと呟いた。「《北鎌尾根一九七〇年撮影》。写真の下の札にそう書いてありました」「北鎌尾根・・・・か」
以上は林原の事務所から戻ってきた、又三郎、森、そして合田さんの会話。この山の写真が今後の事件の捜査に深くかかわってくるのですが・・・。しかしお蘭ちゃん、やっぱり仕事は出来るのね。一見事件とは何の関係も無さそうな、タダの山の写真も全て記憶してるってトコがすげぇ。惚れるわ。そして、林原が個人口座のスーパーMMCとやらを解約したという情報を摑んだのも、お蘭。やっぱ優秀(きゃーー!!

「林原の後始末が先だぞ」と吾妻が目をむいた。「ここまで煙の立っている男を探すのが先決だ。週刊誌なんか放っとけ」「そうはいかん。こっちも重要だ」「なぜ」「あとで話す。出来るだけ早く戻る」「森のことなら・・・・」と言いかけて、吾妻は気まずそうに口をつぐんだ。森の目がこちらを見ていた。結局吾妻は、それ以上言わずに片手を挙げて了解と応じた。何か言いたげな森を促して、合田は、出先から帰ってくる捜査員で混み合い始めた会議室を飛び出した。碑文谷の玄関を出るまでのほんの数十歩の間に、合田は手短に雑誌にすっぱ抜かれた記事の話をし、しばらく捜査を外れるよう伝えた。
森くん、さすがに鋭くその場の空気を読むのね。やっぱり、その勘の鋭さは刑事だわぁ。だけどあたしなら「捜査外されてある意味ラッキー」とかって思うけど。だって仕事しないで良いってことでしょ?堂々と仕事サボれるってことでしょ?遊びながら給料貰えるってことでしょ?・・・(違?)。

環七通りへ出てタクシーを止めたとき、無言だった森が一言「分りました」と言った。まったく表情はなかった。その森をタクシーに押し込みながら、自分の言葉が足りなかったのだろうかと合田は迷い、結局、勝手にしやがれと思い直した。しばらくしてから、ウナギの話を思い出したが、言い出すタイミングはすでに失っていた。
ここ、すごい好きな場面。写真週刊誌に顔を撮られてしまった為、捜査本部から外されることになったお蘭。まったく顔には出さないけどショックを受けているっぽい森くん。そんな森くんを気遣いながらも言葉に出せない合田さん。この微妙な感じのふたりの関係があたし的には萌えだわ

「森。時間は分からんが、今夜中にポケットベルを鳴らすから、本庁の六階へ電話を入れてくれ。俺は七係の机にいる。船橋まで帰らずに、都内にいてほしい。聞きたいことがあるし、話したいこともある」「何です」「山の話」 言葉が足りないなと思いながら、合田はそれだけ言った。
それでもやっぱりお蘭が心配。放っておけないのね、合田さん。こういったギクシャクした合田さんとお蘭のやりとり、たまらないわ~(うふっ)。 やっぱ、萌えだわ~




              ~ マークスの山・読書感想記  次ページへ続く~

      


       
           



もう今回は、マジで森くん萌え場面しか抜粋してません。
森くんファン以外の方が読んでも、全く面白くも可笑しくも無い事は百も承知の確信犯です。

ゴメンナサイ





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                        2013.4.21 UP



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