マークスの山 読書感想記・5




「係長。森の件ですが、納得いきません。森は重要なネタを掴んでいるので、森がいないと捜査に支障をきたします」「ここだけの話だが、森については、ちょっと困った噂を聞いている」「何ですか・・・・」「武道場で新入りを何度か殴ったそうだ」 (~途中略~) 「それは・・・・たまたま痒かったんですな」「痒い? なんだ、それは」「いや、何でもありません。事情を聞いてすぐに善処します。とにかく捜査には戻して下さい。成績上げさせますから」「稟議は上げてみるが、期待はするな」と林は無表情に言った。
例の写真週刊誌にスッパ抜かれた件で、出版社に殴り込みをかけた後のモヤシと合田さんの会話です。なおも森くんを捜査に戻そうとモヤシに食い下がる合田さん。ええ人や~。合田さんって自分では自分のこと冷血動物みたいに思ってるみたいだけど、実はすごく人のコト思い遣ってますよね。普段は(特にこの頃は)、口は悪いし、(特にお蘭ちゃんのコト)怒鳴り散らしてたりしてるけど結局はすごく色々と気に掛けてるんだよね~(涙)。 森くんは合田さんの気遣いに気付いてるのかしら? しかし、出版社のヤリ手の編集長との攻防戦でクールに編集長をやり込める合田さん、スッゲェかっこ良かったな~(惚。

一方的に電話を切って、別の電話番号のボタンを押しながら、合田は一瞬迷った。だが、結局全部の数字を押し、森のポケットベルを鳴らした。五分で森は交換台を通して七係の机へ電話をかけてきた。公衆電話で、高架下の電車の音が響いていた。《新橋です。第一京浜のそば》「三十分後に日比谷口で」《了解》 森は、桜田門からあまり離れずに、ポケットベルが鳴るのを待っていたのだろう。午後九時前だった。
本当は捜査で手一杯でやらなきゃいけない事が、山ほどある合田さん。捜査から外された森くんのことなんてかまっていられないのに、結局は森くんの元に向かうのねぇ。あたしだったら放っとくわ、あんな可愛くない部下。やっぱり合田さんお蘭ちゃんのコト・・・・。それにしてもマークスの頃の合田さんって、漢気がみなぎってるわ~

今年の秋は雨続きだ。日比谷口で会った森も、濡れそぼって白い息を吐いていた。アルコールの臭いはなかった。ダスターコートの肩をすくめて、まだ若い男が一人、酒も飲まずに夜の新橋辺りでひとり路傍に立ってられるのは、刑事か犯罪者か、森義孝ぐらいのものだ。
《刑事か犯罪者か、森義孝ぐらいのもの》って。森くんは刑事だし犯罪者以外は当てはまるじゃんっ、て、この文章に矛盾感じたのはあたしだけでしょうか? まぁそんなことは置いといて、森くんは、超絶捻くれてるし、ある意味世捨て人っぽいし、余裕で酒も飲まずにひとりで路傍に立っていられそうなんですけど。逆にみんなで酒飲んでワイワイ騒いでる姿の方が想像出来んわい。

「寒いな。どっかへ入ろう」「人のいるところで話は出来ません。そこの烏森神社へ行きましょう」 森の体調を優先するしかなかった。森は先に立って歩き出し、ちらりと合田の目を見て「今夜は最悪で・・・・」と眉根に皺を寄せた。 「痒いんか・・・・」「はあ」「ところで、武道場で誰かを殴ったか」「殴りました」とだけ森は答えた。「林に聞いた。やるんやったら、告げ口されんようにやってくれ」
きゃ~! ふたりのこういう会話、好きだわ~(萌)。 余計なことは一切言わない、と言うか、必要なことも端折り過ぎなんじゃないのー、っていう感じのやり取り。でも、一見冷たく感じるけど、本当はお蘭への愛情が詰まってる合田さんのお言葉。うふっ きゃ~ (勝手にやってろと、お思いのそこのアナタ、はい、勝手にやります。すみませんm(__)m)

森はぽりぽりやりながらメモに見入り、「警察に対する挑戦ではないですね」と言った。「ああ、違う」「《笑ってる奴ら》の一人が林原なら、松井もそうだったのかも」「ああ。笑ってるとは思わへんが」「笑ってはいないでしょう。世間に知れては困るような何かを抱えて、脅されて、警察にも言えずにおろおろしている者たちがいる。笑っているのは犯人です。これ、カツですよ」 森はあっさりカツ(恐喝)だと言った。 「林原が預金を解約したと知ったときに、そう思いました。恐喝が絡んでます」「ああ、恐喝だ」合田は内心畜生と思いながら、うなずいた。「早くケリをつけないと、もっと犠牲者が出る」「三人目は出しやしません」と森。「当たり前だ。だから急いでるんだ。林原、松井のほかに誰がいるのか、探すのが急務だ。大学の名簿を探すヒマがあったら、図書館で『司法大観』を当たる方が早いと思うが、それより先に山を当たってみてほしい。これは俺の勘や」
きゃ~、きゃ~、きゃ~、かっこええわ~ この切れ者刑事同士って感じのふたりの会話。 きゃーー!『カツ』って警察用語よねぇ? この警察用語をサラッと口にする森、萌え萌えだわ~(鼻血)。 恐喝だと見抜いていたけど先に森くんにサラッと言われて拗ねる雄一郎もかわええ~(涎)。

「・・・・そういえば、主任は登山をするんだったな。山のパーティというのは、何か特別なものですか」「俺は人と行くのが好きやなかったから、パーティというのはよう知らん。大学のころに山岳部の奴らと付き合った限りでは、何か特別な仲間意識のようなものがあるのは感じた。ほかのスポーツと違って命がかかってるから、エゴ剥き出しの醜い仲間の素顔も見るだろうしな。ほかのスポーツ仲間とはちょっと違うと思う」 「私らみたいだ」森はそんなことを言って、虚空に向かってひとり笑った。 「もう痒いのは治まったんか」「はあ。山の話を聞いていたら・・・・。アトピーに山の話が効いたんですよ、多分」
こっちはちょっとプライベートに踏み込んだ会話っ! こっちも萌え 「私らみたいだ」と、虚空に向かってひとり笑う森も、サラッと森くんのアトピーを気遣う合田さんもかっこええ そして、合田さんいわく、登山は人と行くのが好きじゃないってことだけど、例外がただひとり。あの人だけは特別だったのね。掃除機片手に六法全書読むあの男だけは・・・。 しかし、高村薫ってどうしてこんなに魅力のある男達を書くのが上手いんだろう? なかなか女性の発想からこれだけリアルな男って書けないと思う。現に高村小説読んで、高村薫って男の作家だと思ってたって人結構いるし。

珍しく、ほんとうに今夜は具合がよくなったからと言う森と、新橋でウィスキーを一杯ずつ空けて、合田は渋谷行きの電車に乗った。午後十一時前だった。碑文谷の本部で吾妻が苛々して待っているだろうとは思ったが、電車は決まったスピードでしか走らない。
合田さんが森くんのポケベル鳴らして連絡取ったのが午後9時前。30分後に日比谷口で待ち合わせ。森くんと別れて渋谷行きの電車に乗ったのが午後11時前。ってことは・・・きゃ~、1時間半ぐらい森くんと一緒にいたのねっ。捜査で手一杯なのに合田さんったら、1時間半も森くんと一緒にいたのねっ!やっぱり森くんの事、愛してるのねっっ (・・・・・はい、勝手にしますm(__)m)

靴音はすぐ後ろに迫り、やがて横に並んだ。名刺が一枚横から出てきた。某新聞社社会部とあった。名は根来。四十前後の、鼻筋の潰れた堅い横顔が見えた。「担当はどこです」「地検」あっさり男は答え、「そこに公園があるから」と、先に立ってまた一つ路地を曲がった。
根来登場!! 実はあたしはずっと根来のこと、『ねく』って読んでました。『ねごろ』って読むんですねぇ。あたしがそれに気付いたのはwowowで放送された『マークスの山』を観た時。根来役の小西真奈美が『ねごろ』って呼ばれてて「エッ!!『ねく』じゃないのっ!?」って、驚いた覚えがあります。

地検の中で、また泥仕合をやっている。今回は、陰湿な中傷の網をものともせずに泳いできた加納祐介が、くわえていたエサをひょいと網の外に投げてくれ、それに齧りついたのが自分だった。誰かに見られていたのではない。検察内部で何かのリークがあって、外に合田の顔があったら、一+一=二で加納が網にかかるだけのことだった。逆も然り。もう十年来そういう外圧の繰り返しだが、どちらもへこたれず、しぶとく生き抜いてきた自信はあった。
そうか、加納さんと合田さんは公認の仲なのか。周囲の連中はふたりのラブラブな関係を皆、知ってるってことなのね!・・・・・って、違ぇよっ!! まぁ、合田さんの元妻が加納さんの妹だったってコトは検察内部でも警察内部でも知ってるだろうし、そういうことなんだろう。合田さんも加納さんも、潰すか潰されるかっていう複雑な組織の中で、生きてるんだなぁ。そういう厳しい世界で生きてる男達・・・萌えだわ

今夜、あの根来という記者に、『気をつけてくれ』という一言を託した男がいる。それを受託した根来にとっては《良心の捌け口》だろうが、請託した男の思いの切実さは、百倍にもなって合田の血の中を巡っていた。
でもって合田さん、加納さんに守られてるのね~。加納さん、そっと合田さんのこと見守っているのね(涙)。そんな祐介の想いに気付かない雄一郎。・・・・切ねぇ(涙)。




             ~ マークスの山・読書感想記  次ページへ続く ~




           




なんだか『マークスの山』、長編すぎて、最後まで辿り着けるかどうか不安なんですけど・・・・・。
とりあえず、最後まで頑張ります。





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                       2013.6.13 UP



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