警視庁捜査一課第三強行犯捜査第七係 第五話 《凶弾》



午前4時過ぎ、夜明け前の闇と雨に包まれて、合田雄一郎は団地から駅までの坂道をひた走る。赤羽駅西口前に駆けつけ、タクシーの窓を叩いた。寝ていた運転手が起き上がり、車のドアが開く。水の垂れる傘を外でひと振りして車に乗り込みながら、「池袋のサンシャインシティの裏。急いで」 と合田は言った。 「造幣局のとこですかね」 「ああ」 「この時間に仕事ですか」 「うん、まあ。人使いの荒い会社なもんやから」 「失礼ですが、どういう方面の・・・・」 「電線の保守とか」 「へえ、技術屋さんですか・・・・」 合田はシートに深く背をうずめ、数分を惜しんで目を閉じた。睡眠不足の疼痛が走る脳裏に電話のベルがジリジリ鳴り、本庁の当直の声が響き続けている。 《東池袋四丁目十三番の路上。死亡確認。ガイシャは男。アジア系。身元不明。急げ》

東池袋のその辺りは新宿の百人町や大久保に次いで外国人の多い地区だが、路上に転がっているらしいホトケ1体について、今から想像することは何もなかった。まともに泥棒も寄りつかない古い木賃アパートのひしめく路地が目に浮かび、もう1年近く足を運んでいないなと思い出す。 1年前は、中国その他のアジア系の就学生たちと、行き場のない老人たちが肩を寄せ合っている町という印象だった。
午前4時30分。七係の中で、1番最初に現場に到着した合田さん。木賃アパートの玄関先に横たわる男の遺体を見て、『こんな至近距離から撃たれたのは、顔見知りの犯行か。違う。顔見知りなら、こんなに人目につくアパートの入口で狙う事はない。とにかく、この殺しは日本人のものではない。狙撃の場所。撃ち方。乱暴というしかない』 と考える。

午前4時45分を回ったころ、鑑識の一行が到着し、前後して七係の仲間たちも三々五々姿を現した。トレンチコートをぐっしょり濡らした吾妻。顔つきも足取りも普段通りの雪之丞と林係長。アノラック姿の老けた学生みたいな十姉妹。競馬通いといったジャンパー姿の肥後のオッサン。紫のシャツを覗かせている又三郎。ヤッケにジーパンの森の 《お蘭》。森は、先日のちょっとした事故のせいで、頭に派手に包帯を巻いている。
七係の面々の私服姿に、それぞれの個性がよく出てます。(雪之丞とモヤシの私服は不明だが)。 森くん、ジーパン姿が多いようだけど(第1話でもジーパンだった)、意外。ジーパンとかラフな格好するイメージが、あまりなかった。あたしの中では、森くんはいつもネクタイしてるイメージだったんだけど。 ちなみに合田さんの服装は、ジーパンとセーターの上に登山用のゴアテックスのヤッケを着込んで、足元はブーツ。森くんと似たような格好じゃん。やっぱり、似た者同士なのねぇ  しかし何と言っても、ここの一番の萌え場面は、頭に派手に包帯を巻いた森くんでしょう←(まぁ、あたしだけだけどな)

「賭けようか」 路地にぐるりと目を巡らせた吾妻が、合田をつついた。「本部は立たんな、これ」 最近、外国人同士の訳の分からない殺しや、単純粗暴な暴行事件ばかりに付き合わされて、吾妻の優秀な脳味噌は腐りかけている。 「いや、立つ」と合田は応えた。 「俺は立たない方に千円」と吾妻。 「俺は立つ方に千円」 「立たなきゃ野郎やめろって」 横から又三郎が口を出し、けだるい笑い方をした。 
七係恒例、掛け合い漫才っす。又三郎は、あいかわらずお好きですなぁ、下ネタ。 お蘭もちょっとは見習え。又三郎のこういう生き方。合田さんもなっ。 こういう柔軟さがないから、ふたりとも 『照柿』 で、ドロップアウトするんやて。 (下ネタ言うのが、柔軟な生き方か?) 

森は、手帳に線を引いて各戸の区割りをし、部屋の外に出ているガラクタの一品一品を書きつけ、表札の名を書き取っていた。脂の臭気がこたえたらしく、アレルギーの出始めた顔をゆがめて、口も開かない。 「ガイシャには同居人がいたと思うが、もう逃げてるだろうな」 そう合田が呟くと、森は首だけ縦に振った。 
脂の臭いもダメなのねぇ・・・(涙)。 何にでも敏感に反応しすぎるお蘭ちゃん、まるで炭鉱のカナリアだわ。きっと、繊細なのね。(そうか?)

「ガイシャの持物ぐらい残ってるだろう」 「しかし、このアパートは全部、人がいます。空っぽの部屋はない」 「つまり、こうだ・・・。知り合いの知り合いの、またその知り合いのツテを頼って、ある男がどこかの部屋に転がり込む。4、5人雑魚寝していても、互いにほとんど氏素性も知らない。多分、深夜働いていたり、昼間働いていたり、早朝働いていたり、生活時間はバラバラ。家賃さえ分担すれば、問題なし、関心なし。ある男が今夜死んで、そいつを知っている別の1人が姿を消しても、残りの者は気にもしない」 「ありえますね」 「以前は、こんな感じと違うたんやが・・・・」 「何が」 「うん・・・。よく分からん」
  は、合田主任と森くんの会話。 合田さんが 「うん・・・。よく分からん」 と言葉を濁したのは 《歩いていると、背筋に強い緊張を覚える。未知の視線に射抜かれているような、この感じを人にどう説明していいのか、分からなかった》 という胸の内があったから。 合田さん、初動捜査の時から 『誰かに見られている』 というのを感じている様子。 森くんが、その視線を感じているのかは不明。

森は、ときどき 《痒い》 という渋面を作りながら、その場で大家に渡さなければならない押収品目録交付書を黙々と書いている。押収するのはボストンバッグ、歯ブラシ、李と張が使用していたというコップ、李が読んでいたという日本のマンガ週刊誌数点、張のものだというビデオテープ数点。
森くん、香水の匂いで痒くなり、整髪料の匂いで痒くなり、脂の臭いで痒くなり、微量のコカインで具合が悪くなり、そして愛する合田さんからは冷たくあしらわれ、島に行った要因は、やはりこれらが原因か? (・・・違?

部屋を出ると、森が白手袋の掌を合田の傍らでそっと開いて見せた。中に紙マッチ1個と、クシャクシャの紙切れ1片。「ボストンバッグに入ってました」 紙マッチには大久保1丁目のクラブ 《アルデバラン》 という印刷があった。紙切れの方は、《王芳雄(ワンファンション)》という手書きの氏名と、8桁になる前の7桁の〈03〉付き電話番号。どこかで見た名前だと合田はとっさに思った。
紙切れを機捜に見せ、「B号照会」 と囁く合田さん。 ほえぇぇ、なんかカッコエェ あたし、こういうのに非常に萌えてしまいます。 でも、『B号照会』 ってなに? 警察用語なのか? その何やらよう分からんB号照会の結果、《王芳雄》 は密入国組織のブローカーと判明。 なんか、ヤバそうだ・・・・。

名前1つ聞き取る為に、甲高い早口で何事かまくしたてられ、泣かれ、わめかれ、こちらはいいかげん黙って聞いたところで 「名前と部屋番号は!」 と繰り返す。 森は合田より広東語や韓国語が分かり、「名前は、部屋番号は、ほかの同居人は」 と2か国語で繰り返すのはもっぱら森が引き受けた。
外国人相手の聞き込みは、大変みたいです。 『御上に従順で卑屈になりがちな日本人と異なり、彼らは自己主張と権利意識の強固な国民性なのだと、そう思わなければ、今の東京で刑事はやってられない』 と合田さんは腹をくくっている様です。合田さんも森くんも、色々苦労してるんですねぇ。 ところで森くん、広東語と韓国語、分かるんか。 やっぱり刑事って職業は事件で外国人相手にする事も多いだろうから、数ヵ国語、喋れないとダメなんでしょうかねぇ。 英語とかもバリバリ喋れるんでしょうか? 喋れたらカッコイイんですけど。 合田さんは英語喋れるんだっけ? 確か喋れるっていう記述が 『LJ』 の中に有ったような気がするんだけど。 とりあえず、広東語と韓国語は森くんの方が分かるんやな。 たまには魅せてくれるんやな。森も。 たまには。

未知の世界の異物を目の当たりにしているような居心地の悪さだった。住人たちの顔、目つき、住まいの様子、何もかもが、自分たちの世界とは混じり合うことのない周波数を発しているように感じ、未明からずっとそれを拭い去れないでいる。 見られている、と何度も思った。誰かの目が見ている。その目を探して、また住人たちの面々に目を走らせる。
またここでも、合田さんは誰かの視線を感じているようです。 これが合田さんの思いすごしなら、良いのですが・・・・・・・。

捜査と聞き込みを、午前8時に切り上げてアパートの階段を降り始めたとき、森が突然足を止め、1階の階段下の一角に目を据えた。合田もその方向を見た。 人垣の後ろに、この2時間弱の間、住人たちの中にはいなかった男が1人立ち、こちらを見ていた。記憶違いかと一瞬考える。 「そこの人!」 と森が声を上げた途端、その見知らぬ男は身を翻した。
人だかりの中から怪しい男を嗅ぎ分ける森くんと合田さん。刑事の勘ってヤツなのか? 合田さんと森の頭の中には、2時間弱の地どり捜査で回ったアパートの住人の顔が全てインプットされているって事か。 やっぱりふたりとも優秀なんだなぁ。さすが切れ者同士。かっこええ しかし、合田さんと森くん、なんだかヤバイ領域に足を踏み込んでいる様な気がします。 なんとなく嫌な空気が流れている予感。

寝間を踏み荒らされた住人たちにわめき散らされながら、午前8時半過ぎにアパートを出た。ほかのアパートの捜査はすでに終わり、仲間は引揚げ、路地には立ち番の巡査2名が残っているだけだった。 「よくやるな」 と機捜が真顔で呟いた。「何がだ」 と、合田は聞き返した。 機捜はちょっと考え、「俺ならあそこまではやらん」 と応えた。「面倒を避けたいというんじゃないがな。何というか・・・・御上だからって、踏み込まないほうがいい場所が、今の東京にはごろごろあるんだ」 「それ、説教か」 「ああ、そうだ。あんまりガン飛ばして顔を覚えられるのはよくない。どこで誰が見ているか分かんないからな」 「もう、見られてる」 「誰に・・・・」 「知らん」 「狙われてるんだぜ、それは」 「俺を狙って、誰が得するんや」 「そんな次元の話じゃないだろうが」 「人の心配するヒマがあったら、ホシを探せよ、な?」
被害者が入口に倒れていたアパートを含む並びの4件を見回った、合田、森、機捜の3人。 不法就労などの摘発を恐れる外国人達にとって、合田さんたち警察は招かれざる客に違いないが、合田さんと森くんはかなり強引とも言える様な聞き込みをした。 機捜の男の忠告が本当にならない事を願うばかりですが、すでに合田さんも、常に誰かの視線を感じているみたいだし・・・やっぱり合田さんも森も踏み込んではいけない領域に足を踏み込んでるんでしょうか・・・・・。 

合田は男のジャケットの胸を軽くはたいた。拳銃を入れたホルスターの感触があった。ひょっとしたらと思って叩いてみたのだが、案の定だった。 「隊長の指示か」 と尋ねてみる。 「いや。個人の判断に任されてる」 「いざとなったら、ソレで俺らを守ってくれるんか」 「バカ」 機捜の男は当惑げに合田の目を覗き込み、「そのうちケガするぞ」 と吐き捨てた。
現場に真っ先に駆けつける機捜が、個人の判断にしろ拳銃を携帯するという事に釈然としない思いで、『いつでもどこでも丸腰の自分らがアホウなのか、それとも、あの機捜が神経症になっているのか。もちろん、あの男が病気なのだ』 などと考える合田さん。 でも、機捜が拳銃を携帯しているのは、機捜も、それなりの危険を感じているという事だろう。

「森。お前、あの人だかりの中でハロルドに気付いたのは顔か、目か。向こうが見てたんか」 「目が合ったんです。それから、あとから紛れ込んできた顔だと気付きました。それがどうかしましたか」 「いや・・・・。ところで、その頭の包帯、何とかならんか」 「2日前に縫ったばかりです」
ハロルドと目が合ったという事は、ハロルドが森くんたちの方を見ていたからという事だろう。 やっぱり合田さんと森くんの周りに不穏な空気が流れているような気がします。 合田さんの 『常に誰かに見られている』 という感覚は、気のせいでも無さそうな・・・・・・。

それは分かっていた。2日前、強盗殺人の容疑でホシを逮捕しに行ったら、ホシが覚醒剤をやっていて、いきなりゴルフクラブで殴りつけられたのだ。5、6針縫ったのに入院もせずに仕事に就いているのは百も承知の上だが、合田はあえて 「野球帽か何かで隠せよ」 と短く言った。 「何のために」 と森は仏頂面で聞き返す。 「目立ち過ぎる」 とだけ合田は応えた。森はばかばかしいといった面でそっぽを向いてしまった。
そうか・・・・、森の頭の包帯は犯人逮捕時にゴルフクラブで殴りつけられたのか・・・。 刑事って商売も命がけやなぁ。森くん、意外と突っ走るタイプなのかしら? しかし、頭に包帯グルグル巻きにした森くんの姿、想像しただけで萌え萌えだわぁ~、あたくし それにしても合田さん、あいかわらず言葉が足りない・・・。 ホントは 「あまり目立つと狙われやすいやろ。俺はお蘭、お前の事が心配なんや」 ってコトが言いたいんでしょ?(アホ・・・)。  「目立ち過ぎる」 だけじゃ伝わりませんって。 森もちょっとは合田さんの言葉の裏ってモノを読み取れよ。ばかばかしいって表情隠そうともせず、そっぽ向くなんて子供やんっ! でも、そんな不器用さんなふたりが好きなんだけどね。

捜査本部は立たなかった。遅れて池袋署の会議室に入ったら、本庁から出てきた1課長がそういう説明をしていた。実のところ、本部が立たないのなら、今日にもどこかで新たな殺しがあれば、七係はそっちの方へ回ることになる。鋭意も糞もなかった。しかし、普段は何だかんだといちゃもんをつける吾妻や森がおとなしいのは、現実にこの辺りを歩き回っている限り、ホシはまず挙がらないだろうと思うからで、それは誰しも同じだった。
あぁ、確かに誰かさん(吾妻ではなく、もう1人の方)は、いっつも会議でイチャモンつけてますもんねぇ。 今回はイチャモンつけないんか。 おとなしくしてる時もあるんやな。 めずらし~~。 ペコさんはまだしも、森のイチャモンは性質が悪いもんな~。言われた方はそりゃ~、頭に来るだろう。

「アジアやなあ」と思わず呟いたら、隣の傘の下で、森が買い食いの握り飯を喉に詰めて何かぶつぶつ言った。 「今ごろ何ですか」 「いや。東京も遂にアジアになったと・・・・」 「今までは、東京は何だったんですか」 「東京」 森はもう返事もしなかった。しかし、無駄話も一応聞いているのが可愛い。
 は、合田さんと森くんの会話)。 きゃーーっ!! 合田さん、森くんのコト、可愛いってっっ!!皆さん、聞きましたかっ、可愛いってっっっ!! ウキッーー! 握り飯を喉に詰まらす森くんも、かわえぇ あいかわらず、進歩のない会話をしている2人ですが、もうあたくし、この場面の2人の会話に萌え萌えっす 『マークス』 や 『照柿』 には無い、合&森の何というか、ちょっと緩い会話。 ここら辺が 単行本化されている高村作品とは、ちょっと一風違った作風(軽いノリ)の 『七係シリーズ』 ならではの、おいしいトコかな しっかし、お蘭、かりにも合田さんは先輩であり、上司でもあるんだぞっ。 その態度は何だっ! 社会人としてどうなのよ、返事ぐらいしろっ!!

合田が言いたかったのはこうだ。合田が生まれ育った大阪にも、戦前から異国の人々が住み着いた町があり、浮浪者の町があり、それなりに行政によって巧妙に管理され、共存してきた歴史がある。しかし、東京に今、根づいているのは管理でも共存でもなく、侵略か占拠といった方が近い。その在り方がアジアだと思うのだ。 歩きながら、森を相手にそんな話をした。 大陸の華僑が東南アジアに根づいた在り方に代表されるように、住みながら交わらず、多様な文化がそのまま交錯し衝突する、その在り方がアジアなのだ、と。金満ボケで自国の方向感覚を失った東京の足元は、今や虫食いのアジアそのもののように自分には映る、と。
う~ん、合田さん、奥深いっす。 あいかわらず思慮深いというか。 『馬』 や 『新冷血』 ではグルグル悩んだり考え込んだりして迷走しているみたいですが、若く活動的で、現場で突っ走っている感じのこの頃から、その兆候は有ったようです。性格なんですかねぇ。物事を軽く流さず、深く考えちゃうんですねぇ、きっと。 でも、日々仕事に忙殺されながらそんなに真面目に考えちゃ疲れちゃいますよ。 もうちょっと軽く考えて、もっと適当に生きたら生きやすいだろうに。 そんなんだから、『照柿』 でドロップアウトするねんっ。(←しつこく言う)。 まぁ適当に生きられない、そんな不器用な合田さんだからこそ魅力的なのかもな。

「それで?」 「俺の頭の中身が、時代についていけるかどうか、心配で」 「人間は悩むうちは努力する、と言ったのは誰でしたっけ」 「ゲーテ」 「とにかく、心配ないです」 森は白けた面でさらりと言ってのけた。 「交わらなくても、話は出来ます。主任と私みたいに」 ズレているような、的を射ているような。森と相対していると、頭の中心軸がきりりとねじれてくる。
この合田さんと森くんの会話、森くんなりに合田さんを気遣ってあげてるのかな、という気がしないでもないような・・・。 不器用な森の精一杯の愛情表現か? それにしても、『ゲーテ』、2人とも読んでるんですかねぇ? この2人の会話からすると2人とも読んでいる様にも読み取れますが、読んでるんだとしたら、「エッ!!」 って感じ。 まぁ、読書家の合田さんはともかく、森が 『ゲーテ』 読んでるの!?  『ゲーテ』 って詩とか書く人でしょ。ガラじゃないんだけど。 ぜってぇ、有り得ねぇ。 しかし、第2話の 《放火》 でも 『ボヴァリー夫人』 知ってたし、森くんも結構、読書家なのか?

「ところで、あの201号室にいた女・・・」 「瑞丹(ルイタン)。廖美范(リャオメイファン)。どっちです?」 素早く手帳を繰りながら森は正確に2つの名前を挙げた。 「瑞丹。ちょっと様子が変だった」 「私は気がつきませんでした」 「俺たちを見ていた・・・・。気のせいやと思うけど。ともかく、あの女は水商売だ。帰宅時間からみて、殺しを目撃した可能性もあることはあるんやが・・・・」 「死体ぐらいは見てるかも」 「ああ、死体は見た可能性がある」 「それで?」 「何か言いたそうな目やったから、ちょっと追ってみるか」 「珍しいですね」 「何が」 「主任が、女の目に気づくのは」 「きっと、悪いことが起こる」 「そうですね」 そう呟いて、森はふいとひとり笑いした。
合田さんの 「201号室にいた女・・・」 との問いかけに正確に2人の女の名前を挙げ、即答する森。 やっぱり優秀なのねぇ。 性格はひん曲がっているが仕事は出来る男なのね。 しかし、この合田さんと森の会話も萌え満載っす。 「珍しいですね」 「何が」 「主任が、女の目に気づくのは」 「きっと、悪いことが起こる」 「そうですね」 (きゃっ) ・・・そして、ふいとひとり笑いする森。 この、ふいとひとり笑いする森くん、萌えだわぁ~ そして2人のこの、なにげない会話、事件の周りに漂う不穏な空気を暗示しているのですが・・・・  (しかし合田さん、なんとなく危険を感じているようですが・・・さすがに鋭いっす。森くんは、誰かの視線とか危機感を感じてないんでしょうかねぇ。そこら辺は触れられていないので全く分かりませんが・・・)

「廖美范が・・・」 と森が突然呟いた。「クサイと思います」 「理由は・・・」 「今朝のガサで、2人のパスポートを見た時、廖美范の方は写真とちょっと顔が違った。そのときは化粧のせいかと思いましたが、頬骨の高さとか・・・・」 森は意外なことを言い出した。自分も同じ女の顔を見たのに、自分の気づかなかったことを指摘されてカチンときたというより、心底びっくりしたのだ。
廖美范の顔がパスポートの顔と違っていたと言う森。合田さんも気づかなかった事に気づいていた森くん。 この七係シリーズでは、今まで散々な言われようだった森くんですが、この第5話 《凶弾》 では、なにげに森くんの優秀さがアピールされてる様な気がするんですが・・・・。 おバカな森くんファンの危ない妄想でしょうか?? 

「なんで、早く言わへんかった・・・・!」 「女の顔には自信ないですし、整形手術したのかも知れないし・・・・」 「アホ。査証と旅券番号の控えをよこせ!」 森の手から手帳をひったくって、警電に飛びつき、本庁の6階大部屋の番号を呼び出した。
確かに、女の顔には自信ないやろうな。 女には縁無さそうやもんな、お蘭。 しっかし、もっと早く言えよ~。何で今頃言うねんっ!アホ。 ところで、合田さんの 「アホ」 ですが、前にも言いましたが、この合田さんの 「アホ」 って、なんかミョ~に愛情を感じるのですが。 あたしも、合田さんに1度でいいから 「アホ」 って、言われてみたい

「機捜に人数分の防弾チョッキを手配したから、届くまで待て」 林は無表情にそう言った。 「はぁ・・・」 「深夜、あの辺りをうろつくなら、チョッキなしではいかん。住人はいいが、君らは目の上のたんこぶだから、用心するに越したことはない。何か言いたいことはあるか」 「いえ」
深夜から明日未明にかけての現場周辺の動態捜査の為に、自分と森を指名した合田さん。 捜査会議後、席を立つ合田さんと森を呼び止めるモヤシ。 防弾チョッキを着用しないとならないなんて今回の事件現場は、やっぱりかなり危険な地域なのね。 しかし、防弾チョッキってなんか萌えだわぁ 防弾チョッキを着て現場の捜査をする合田さんと森くん、想像するだけで鼻血が・・・。 なんか危険と隣り合わせで働く男って感じで、かっこええ

午後8時半過ぎ、合田と森はそれぞれ防弾チョッキをアノラックの下につけ、無線機を携帯して署を出た。腹が減っていたので、先に簡単に定食を食い、東池袋に向かった。
防弾チョッキをつけたまま、定食食べたのかしら? なんか、食べた気し無さそう。こんな緊迫した場面でも飯食えるなんてさすがだ。でも、今食べとかないといつ食べられるか分かんないしね。 どうせ合田さんは、いつも少食だし、今回もあまり食べ無いんでしょ。 森は普通に食ったんか? 

吾妻からはハロルド・ウーは、呉基仁(ウーチーレン)の名でICPO手配になっているシンガポール国籍の元密輸業者に酷似との情報。呉が日本に入国したとの噂はかねてからあったらしいが物証はなし。呉とつながっている内外の組織については不明。 ウーについてのそれらの話が事実なら、自分たちはとんでもないカモを逃がしてしまったことになる。そんな思いで、森と2人顔を見合わせた。
事件発生直後、現場周辺のアパートの住人達の聞き込み捜査を終えて、合田と森がアパートの階段を降りようとしていた時、人だかりの中から合田と森を見ていた、あの男、あれが、ハロルド・ウー。 森が声を掛けたとたん、身を翻して逃げたハロルドを、合田と森はすぐさま追ったのですが結局取り逃がしてしまったのです。 そして、ハロルドの正体が判明。かなり危険な人物のようです。そんなカモを取り逃がしてしまった合田&森。しかも2人ともバッチリ顔を見られているし・・大丈夫なのか?合田・森。心配や。 ・・・しかし、見つめ合う合田さんと森くん・・・・ほえぇ萌えだわ。

午前4時。女2人は戻らなかった。森は欠伸ばかりしていたし、合田の眠気も限界だった。身体も冷えきり、防弾チョッキの重量で肩は強張っていたが、アパートから目を離すわけにもいかない。無線で署を呼び出すと、居眠りをしていたに違いない林が、鈍い声で応えた。 「女は戻りません。両名の捜索願いの手配頼みます。そちらには、誰か残ってますか」 《全員いる。寝てるがな》 「2人起こして、見張りの交代によこして下さい」 《了解。ご苦労》
【女2人とは、合田さんが気になると言った、瑞丹(ルイタン)と廖美范(リャオメイファン)。 この2人が行方不明中】 
森くん、欠伸ばかりして、きっとおねむだったのねぇ。カワイソウに・・・でも、かわええ~ 合田さんも、おねむ・・カワイソウに・・・でも、やっぱ、かわえぇ~ 考えてみたら、事件発生で電話で呼び出されたのが前日の午前4時前後(推測)。 合田さん現場到着、午前4時30分。 森くん現場到着、午前4時45分前後。・・・というコトは労働時間24時間経過。丸1日ぶっ続けで働いてるってコトじゃんっ!! す、凄すぎるっ!! 死んじゃうよ~、朴念仁コンビ(涙。 七係も全員帰らずに署で待機してるみたいだし・・・(寝てるようだがな)。 刑事ってホント大変な職業なんだなぁ~。 朴念仁コンビが過労死しないか心配っす。


(その後、事件未解決のまま、本庁からの指示で、七係は荒川区の町工場で起きた強盗殺人の現場に駆り出され、そのまま荒川署の特捜本部の住人になってしまう。) その日の捜査会議を終えた午後8時半、荒川署を出た。 三河島駅へ歩く途中、三々五々仲町通りの食い物屋に散り、合田たち独身組の4人はあったかいおでんを食おうと1軒ののれんをくぐった。1日、寒風にさらされて隅田川の河川敷を歩き回ったために、1番若い十姉妹までが鼻水を垂らし、森と雪之丞と合田の3人は風邪を引いていた。
森くん、人付き合いめっちゃ悪そうなんだけど、なんかこの七係シリーズでは、なんやかんや仲間と飲みに行ったりしてるっぽい。意外だ。周りと、まったく交わらないんじゃなかったっけ? まったく私語を吐かないと言っていたけど、酒の席でも喋んないのかな? 合田さんもけっこう皆と飲みに行ってるみたいだし、この2人意外と、人付き合いもそこそこはしているようです。

日本酒はあまり好きではないし、付き合いで数杯あおっただけで合田は帰路についた。日暮里で乗換えて赤羽まで、午後11時だというのに空席のない電車にゆられる間、合田はまったくのしらふだった。
へぇ、合田さん、日本酒好きじゃないのね。お酒は普段からけっこう飲んでますよね。 合田さんがウィスキー飲んでるのは、記憶にあるけど。確か、量りかなんかできっちり150g量って飲んでた。合田さんはウィスキー派なのか? ウィスキー以外のお酒はあんまり飲まないのかな? 日本酒だったせいか、合田さんはあまり飲まずにまったくしらふだったらしいけど、他の3人はどうだったのかな?

赤羽西口から、同じ方向へ向かうサラリーマンたちに混じって、シャッターを下ろした商店街をしばらく歩き、いつものように途中のファミリーマートで 『あったか~い』 と書かれたケースの缶コーヒーを1本買い、それを片手にぶら下げてまた歩き出す。寄り道をしている間に、同じ電車を降りた通行人たちの姿は消えてしまっていた。商店街の途中に右に折れる路地があり、高台の団地に登る石段へと通じている。そのほんの20メートル足らずの路地のなかほどに、ノーズをこちらに向けた白のクラウンが1台止まっていた。最初に見たのは、ライトが消えたただの違法駐車の車の姿だった。次に見たのは、暗がりのフロントガラスの中の人影。次いで、バンパーの下の、ナンバープレートの無意味な数字の列。フロントガラスの中の人影が動いた。ほとんど同時に、自動バネが弾けたように合田は斜め前方にジャンプして身を投げ出した。落下しながら、乾いた銃声をいくつか聞き、どういう姿勢で見えたのか、夜陰に点滅する赤黒い閃光を見た。
今回の事件の初動捜査の時から、誰かの視線を感じ、嫌な予感にとらわれていた合田さんですが、その誰かの目線はやはり、合田さんの勘違いではなかったようです。クラウンの中の人影が動いただけでジャンプして身を投げ出した合田さん。一瞬で事態を把握したんでしょうか? 凄いっす。 さすが本庁の捜査一課で日頃から凶悪な事件に関わっているだけあって、感覚が一般人よりも鋭いのでしょう。仕事を離れても刑事としての感覚は、沁み付いているんでしょうね、きっと。

合田はしっかり這っていた。這いながら、どこを撃たれたのか冷静に考え、致命傷ではないとこれも落ちついて考えていた。それは多分、足と脇腹のあまりにすさまじい痛みのせいだったのだろう。生命の証としての痛みと、それを感じる余裕に対する喜びが生温かい血の中にあった。それをあざわらう別の心痛や、頭半分が真っ白になったような驚愕も、血の中にあった。
足と脇腹を撃たれたというコトか? すぐさま危険を察知して前方に身を投げ出したから、致命傷は負わずに済んだのかな? 撃たれながらも急所は外れていると冷静に考える合田さん。さすが刑事や。防弾チョッキを着て捜査したり、機捜の男が拳銃携帯して捜査しているのを目の当たりにしてたりしたから、合田さんも当然どっかでこういう危険も覚悟していたと思う。 いやぁ、かっこええ、かっこよすぎるぞ、合田っち しかし、合田さんがしらふで良かった。飲んでヘベレケだったと思うとゾッとする・・・・

レジの電話機をひったくって、合田は刑事生活12年で初めて、110番の3つの数字ボタンを押した。瞬く間に、流れるように単調な女の声が 《はい、110番》 と応える。 「一課七係の合田だ。赤羽で撃たれた。通話を指揮台と6階へ通してくれ」 《通してます》 「まず、今すぐに森義孝巡査部長のポケットベルを鳴らすこと。次に、千葉県警に連絡して、JR西船橋駅に誰かを走らせてくれ」 《主任・・・・? 主任、どうかしましたか》 という声は指揮台からだった。 《撃たれたと聞こえましたが》 「いいから! もうすぐ駅に入る電車に森が乗ってる。千葉の連中には、頭に派手に包帯を巻いてる3枚目だと言えばいい。ホームでその包帯男を捕まえて、絶対に外へ出すなと言ってくれ。狙われる可能性がある。次に、七係の全員へ連絡。次に、関係各部署への連絡。あとの連絡は、赤羽署へ。俺は大丈夫だ。今から病院へ行く」
撃たれた現場の近くにあった、ファミリーマートから110番通報した合田さん。 撃たれて真っ先にしたことが、森くんの安全確保。 撃たれて真っ先に考えた事が、自分の体のコトではなく、仲間の森のコトっちゅうのが泣かせます。 まじ、カッコイイっす、合田さん。 普段は森くんに対してツッケンドンで冷たい態度だけど、自分も撃たれて傷を負っているのに、自分のことよりお蘭が心配・・・ほぇぇ、萌え~ 合田さんっ!ええ男や~ もうココ、スッゴイ萌え場面っす ・・・しっかし、頭に包帯を派手に巻いた3枚目とか、包帯男とか、散々やな。こんな緊迫した場面で、ソレッてどうなん?って感じですが、それがかえって合田さんの森くんへの深い愛情を感じさせます。

そして・・・・・・
この後の展開が気になりますが、しかし、話はココでプツッと終わってしまうのレス(涙。 消化不良・・・(泣。




                              警視庁捜査一課第三強行犯捜査第七係 第5話 読書感想記 《凶弾編》 ・・・・・・・ 【完】


                        



今回の第5話 《凶弾》 は、合田さんと森くんのコンビが活躍する、あたし的にはヨダレだらだらな内容です。
七係シリーズ 全5話の中でも、ハードボイルド度が1番高く、あたし好みの作風となっております。
しかしこの 《凶弾》、雑誌掲載だから原稿枚数が決められているのか、最後はかなり無理やり文章を詰め込んで、それでも書ききれなかった感が、無きにしも非ずな感じ。
かなり、話が途中でスパッと切れて終わってしまっている様な感じがするんです。
それとも、あえてわざとこういう終わり方にしているのか? あとは読者の皆様の想像にお任せしますと・・・・
・・・・いやっ、やっぱり書ききれなかったっぽい。
あたしは、この話の続きがもう気になって気になって・・・・・高村先生・・・・(涙。
この終わり方は無いやろーーーっ!!! うきーーーーっ!!!!

ということで、この後、(お蘭ファンの独断によるによる) 《凶弾》その後・検証 してます。
                                                              





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                         2013.1.1 UP



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